みなさんは本を選ぶとき、何を基準に選びますか?もちろん誰かの推薦、書評、評判、広告等々本屋に行く前に読みたい本がきまっている場合もあります。私はそういう場合、最近ではネットで購入すること多くなってきています。
でもやっぱり本屋が好き。あの本屋が持つ独特の雰囲気、匂い・・・どんな本屋でも本屋の棚を覗くとドキドキしてきます。例えうっかり本を荷物に預けてしまい、仕方なく暇つぶしにのぞいた空港の売店でもドキドキします。
思いもかけない出会いがそこにあるからです。
そしていよいよ本題。
わたしが本屋でドキドキする理由の一つに、いろいろな装丁の本が見れるから。
一冊の本で本屋が突然「アートギャラリー」に変わることがあるからです。
そんな本の装丁を手がける装丁デザイナーの第一人者が祖父江慎さん。
こんな言い方があっているかわかりませんが、、ちょっと毒があるというか、(ダジャレみたいだけど)想定外のデザインが刺激的。決してエッジの効いた尖ったデザインではないけど、そのデザインはわたしたちの心理の裏の部分をつくものだったり、直球真っ向勝負だったり、・・・つい本を手に取ってしまいます。
祖父江さんが想定した本は吉田戦車著「伝染んです」、小島小鳥写真集「未来ちゃん」、糸井重里「言いまつがい」を初め、小説、漫画、写真集、実用書ななど多岐にわたります。著者も名だたる著者が名をつらねます。
さて、わたしが以前から欲しいと思っていてやっと購入できたのが、トップの写真にある夏目漱石著「こころ」。
あの夏目漱石が自ら想定した初版本を祖父江さんが現在に蘇らせた本。
書籍の帯にはこのように書かれています。
ー書き間違いもそのまま。「・・・」の数もそのまま。執筆の息づかいが伝わる21世紀版『心』ー
漱石が自ら装丁した初版ではそのタイトル「心」でさえ,「心」「こゝろ」など,いろいろな表記や字体が、函や表紙,背の書名入り混じっているそうです。それは、まさに“心”揺れる『心』であったことのあかしで、今回はこれも生かしていろいろな「こころ」が登場します。
とな・・・
函からだして、本の背をみてでてくる「こころ」の漢字。一見何かと思って「ギョッ!」としましたが、「心」の象形文字だそうです。ホッ!
祖父江さんが言うには、岩波書店さんには,漱石が描いた原画が保管されていて、表紙用の石鼓文は原画からスキャンし直して使ったそうです。
これは言葉ではうまく説明できないので、Amazonの「なか見!検索」みたいにめくっていくと・・・
見返しの絵は筆書き。筆のタッチもリアルに残そうという祖父江さんの提案で見返しに再現しています。
巻頭口絵には漱石の描いた絵とともに小篆文字で「心」
巻頭には漱石の赤が入っていて感慨深い。でも祖父江さんも言ってるけど、「心」を買ったはずがいきなり「先生の遺言書」ってなによ!
本をめくり最初の見返し裏にはあるのは、「学は長く,人生は短い……」というヒポクラテスの格言がラテン文字らしい・・・わからない・・・
本表紙の表1の平部には康煕字典から「心」の意味の写しが書かれています
やっと本文
本の最後にある「奥付」も渋い!
ということで、高校生以来の漱石の「心」をボチボチ読もうと思います。
この本を手に取ると、「正しいこと、間違いないことだけがいいことではない」ということがよくわかります。漢字の間違いを肯定するわけではありませんが、選んだ文字は間違っていても大事な場合があるよね。
kindleも便利で使っていますが、紙の本は本当に好き。
装幀だけでなく、本の紙質も私にとってはアートの一部なので、これからも本屋の遭難が続きそう。
さてその祖父江さんの特別展がもうすぐ始まります。
『祖父江慎+コズフィッシュ展:ブックデザイ』
注釈:「ブックデザイ」であってます。「ン」はなくて正解
主 催:千代田区立日比谷図書文化館
共 催:公益財団法人DNP文化振興財団
会期
2016年1月23日(土)~3月23日(水) ※2月15日(月)展示替え
前期「cozf編」:1月23日(土)~2月14日(日)
後期「 ish編」:2月16日(火)~3月23日(水)
(休館日:2月15日(月)、3月21日(月・祝))
面白いのは祖父江さんがデザインした本がただ単に並ぶだけではなく、本がどのように作られるのか、アイデア・プラン出しから始まってそれらを実現するための試行錯誤を、本に使われる紙や本の構造、印刷方法から製本を展示するらしい。
これは「マストゴー!」だね!
わたしが今回参考にした「心」刊行100年記念本製作秘話はこちら