さていよいよ、「五百羅漢図」。
このコーナーは3つに分かれていて、入ってすぐに2作品。途中に、制作資料展示。そして最後に残りの2作品です。
まずこの「村上隆の五百羅漢図」を描くことに至った過程が解説にありました。
きっかけの一つが、あの2011年の東日本大震災だったそうです。
村上さんは、日本のおいて芸術が大きく飛躍した時代においては、背景に地震、大火、飢餓といった死と隣り合わせの出来事がありそこで宗教とあわさった芸術が発生してきたといいます。
そうする事実を考えると、今回の震災で何か描くことは意味があるのではと考えたそうです。
さらにその下地には昨日紹介した「ニッポン絵合わせ」の連載や「狩野一信の展覧会」があり、いろいろなきっかけが一つになって「五百羅漢図」の制作がスタートしたそうです。
村上さんが描いた五百羅漢中国の四神「青龍」「朱雀」「白虎」「玄武」に基づく4つのパートに分かれていています。
この四神は方角や季節とも組み合わさって、風水でも有名です。
「青龍」・・・春・東・緑(青)
「朱雀」・・・夏・南・赤
「白虎」・・・秋・西・白
「玄武」・・・冬・北・黒
この霊獣さんたちがこれらの作品のなかで大きな役割を果たしています。
ここでやっと、写真の紹介。
「白虎」
「青龍」
「玄武」
「朱雀」
いや~~~!聞いてはいましたが、会場でそれを目にするやいなや、その大きさに驚きます。
この4作品を合わせて合計100m! 世界最大の絵画となるそうです。
写真もiphoneでは真横から撮っても全景を映すのは無理。
こうやって4作品並べると壮観です。
一つ一つの特徴をみてみると・・・
「白虎」
この作品のかなで、大きく印象的に描かれた「バク」より小さく且つおとなしく、写実的(?)に描かれた白虎。中心よりかなり右側に鎮座するので、思わず探してしまいました。
こちらが夢を食べる「バク」。
また、ここでは、一瞬油田の爆発か?というくらいに全体をおおう大火を思わせる赤い炎が印象的です。
このパートだけで総勢200人の羅漢が描かれているそうで、特徴としてはそのほとんどが前を向いています。
動きの少ない羅漢さんたちですが、逆に動きのある背景のせいか今にも動き出しそうな雰囲気を醸し出していました。
トリビアとしては、前回紹介した「平成方寸五百羅漢図」の掛け軸をもった羅漢さんがいるので、探してみてね!
「青龍」は白虎と異なって、画面いっぱいに大きく描かれています。
しかも、こちらは何だか漫画チック。愛嬌すら感じる表情です。
ここでは「Tsunami」を思わせる大きな波がバックに描かれていて、この龍と合わせて白鯨が大きな口を開いてこちらに向かってきます。
カラフルなぐるぐる渦巻きも可愛いけど、笑いながら「逃がさないよ~」って追ってくるみたいで、怖い!
でも、ペルシャの船や白い象など異国のものも描かれ、海の持つ怖さと外の世界へ連れて行ってくれるものとしての魅力もみてとれます。
海の怖さと魅力の二面性があふれた絵でした。
ちなみに白鯨と白象は「ニッポン絵合わせ」で伊藤若冲の「象鯨図」作品をもとに描いた作品からきているそうです。
「玄武」のパーツでは、「玄武って何?」てところからスタート。他の3点は比較的なじみのある生き物ですが、「玄武」は聞いたことない!
「玄武」は蛇と脚の長い亀が合体した想像上の生き物らしいが、このパートでは生き物そのものとしては描かれていませんでした。
かわりに中央の「山(霊山)」が亀、そのまわりの雲みたいなものが蛇を象徴していると解説にありました。
逆にいろいろな生き物が登場。
なんとこちらは「もののけ姫」のシシ神様からヒントを得たという霊獣が・・・
またこのパーツの羅漢さんたち基本ポーズは「合掌」。
何を祈っているのかな?
最後のパーツ「朱雀」はこれまたガラッと変わって宇宙空間が広がります。
壮大な宇宙のなかに浮かぶ我らが太陽系も描かれています。
足元は水面。水面上で座禅を組む羅漢さんたち。そして宙に浮いてカンフーをする羅漢さんも・・・天女も舞っています。
「小さい、小さい!」そう叫んでしまいそうな気持ちにとらわれて一方、何ともココロ落ち着く不思議な異次元の世界は、この会場すら宇宙に変えてしまう力を感じました。
おっと、この中で描かれている四神は「朱雀」。鳳凰です。
手塚治の「火の鳥」を思い出したら、やはりそこからもインスピレーションを受けたと解説にありました。
ブルーの静かなトーンの中でひときわ華やかに羽ばたいた姿が印象的でした。
ところで最後になりましたが、「羅漢って何?」
知ったかぶりしたくて調べるてみると、本来「羅漢」とは仏教発祥の地インドのサンスクリット語に由来し「阿羅漢」とも呼ばれれいるそうで、めちゃめちゃ簡単にいうと「尊敬や施しを受けるに相応しい人」らしい。解脱した人???
「ある」「いる」といった「存在することの楽しみ」だけを感じる人・・・「わたしはいるだけで素晴らしい!」・・・これならわかるわ~
もともとは釈迦の弟子のひとりだったのが、16人になり、最後に500人。
釈迦が涅槃に入ってからも、この世に残って、「国際救助隊」みたいな仕事もしたらしい。あくまでも「らしい」ですよ、「らしい」。
そのインド~中国~そして日本と絵になってわたってきた「羅漢さん」。この弟子の羅漢さんたちを何故か庶民たちが信仰するようになってきたんだって!
やっとここまできました。
あともう一息。次回は展示してあった制作資料のお話を・・・