この「五百羅漢図展」では、これの制作にあたっての資料の公開がありました。
これだけの作品を一年で仕上げたという事実に驚くとともに、「どうやって?」という疑問がわきます。
その疑問に応えてくれる資料の展示は、見ていて驚くものばかりでした。
そもそもこの作品は村上さん一人で描いたものではなく、今までのアシスタントに加え、スカウトキャラバンで採用した200人以上の美大生らと工房で制作したそうです。
写真をみると、工場のよう・・・
200人に及ぶ人間をコントロールして一つの作品を作り上げることのむずかしさは想像に難くありません。
「絵を描く」という技術的なこともそうですが、メンタルの指導や集団をまとめることの難しさも考えてしまいました。
この作品自体は、「霊獣」「五百羅漢」という既に認識されている羅漢さんをもとに描かれていますが、展示されている資料をみると、その羅漢についての資料だけでも膨大なものでした。
それ以上にその緻密さに呆然。
リサーチ、リサーチ。
サンプル、サンプル。
壮大な構図の中、好き勝手に描いているわけではなく、歴史的資料や絵画を緻密に分析したうえで、一人一人、一匹一匹、一線一線、一色一色に細心の注意を払って描かれた様がみてとれます。
お~~~!「村上様」だ!
それくらいの統率力ないとこの作品はできないなあ。
工房の朝は「ラジオ体操」からスタートして、綿密な作業日程の確認を朝礼で行なうそうです。また、綺麗に整理されて効率よく作業できるように整備された作業場も印象的で、「芸術制作=雑然、混沌とした場」という概念を覆されます。
実はこのブログをスタートさせてすぐに書いた本の紹介にも書きましたが、わたしが村上さんに惹かれたのは、「芸術=売れてなんぼ!見てもらってなんぼ!」という当然と言えば当然。でも日本ではなかなか評価されないその志です。
それは「芸術=孤高の人」という概念が一人歩きしている日本において、「芸術家≠孤高の人」というところへ戻る作業から始まっているように思います。
そう思ってみると、この工房で制作ということ自体は、古くから日本ではあったことで、珍しくないのかもしれませんが、規律あふれる作業場はその辺の体育会より凄まじさを感じました。
現代では「古い」と言われかねない規律のとれた組織での最先端の作業。
みんなで一緒に作業するアニメの世界では当然なのに、こと芸術となるとそれは違うよと言われかねない芸術制作の形態。
「村上隆」は日本における芸術のあり方をも変えてしまったいる気がします。
制作映像もチラ見しつつ、このコーナーたけでもじっくり見たら30分はかかりました。
面白かった~~~
次回はようやく最終回。
もう少しおつきあいお願いします。
「芸術起業論」 村上隆 著 - & BONO インテリアデザイン、あれやこれや