さて、「空を見上げた」次はこちら・・・
「ネイション(国家)とは何か」
いきなり193台の足踏みミシンがずらりと並ぶ迫力ある作品。
国際連合加盟国193か国の国旗がミシンにセットされていて、それに糸が絡まっています。
床には切り裂いた国旗が散らばっています。
多民族国家のインドにとって国家とはということを投げかけた作品ですが、おりしもトランプ新政権で揺らぐアメリカ、移民問題が深刻化するヨーロッパなど、世界中のそれぞれの国で「国家とは何か」が問われている昨今を凝縮したような印象を受けました。
奥の深いこの作品は下の解説を参考にしてください。
「日の丸」もちゃんとありました。
ちなみにこの展示に使われたミシンは公募で「展示協力」をお願いして集めたそうです。残っているんですね。
さて、この足踏みミシン。テキスタイル工場の多いインドではミシンは大事な設備の一つです。
神様もミシンで宇宙を作っています。
次の作品は日本の食品サンプル会社の協力で作った作品です。
ハルシャの生まれ故郷マイソール(南インド)の食事。
綺麗にセッティングされているのはよくありますが・・・
食べ残された食品のサンプルも・・・
足跡が人の痕跡を表現しています。
平面ペイントだけに終わらないハルシャのアーティストとしての活動の幅広さに驚きます。
この立体アートは繋がっているのに見えないという人間の情景を表現しているそうです。
フェイスブックなどのSNS世界が頭に浮かびました。
私自身「繋がっている・・・でも余程のことがない限り会わない人・・・」昔はいなかったそんな人が本当に増えています。
日本の小学生とのワークショップも開いたそうです。
そろそろ最後のブースです。
ここにこの展覧会で一番の大作があります。
「ふたたび生まれ、ふたたび死ぬ」
背景ではなく大きな輪を宇宙とするこの作品。
「ふたたび生まれ、ふたたび死ぬ」は仏教の輪廻思想をもっている日本人にはとても理解しやすい作品かもしれません。
私たちのうる宇宙。それが一番終わりではなく、宇宙を包み込むさらに大きな何かがあるかもしれない・・・壮大な宇宙感に納得しました。
そして空を見上げる人々や動物たち。
インドの現代アートの作品を見たのは初めてでしたが、想像以上に面白い展覧会でした。
インドというとどうしても象やインドの神様を描いた伝統的な絵画や刺繍などの工芸品を思い浮かべてしまいがちですが、急速に近代国家へ変身をとげる過程でのなかで芸術は何をどう表現していくのか・・・とても新鮮な切り口でした。
そしてその変化の中での矛盾を難しい言葉ではなく、パッと見て感じさせてくれるアートの力を感じました。
その中でインドという国家を超えて宇宙をみつめる思想の大きさはインドの奥深さにも感動しました。
行ってよかったと思うお勧めの展覧会です。
このあと「キッズ・ワークショップ」や「アーティストトーク」「ヨガしてアート」などの企画イベントもあるようなので、興味のある方は是非HPを訪れてみてください。